『ポリリズム』が世界を巡り巡るよ

 ベタなタイトルですがこれしか思い浮かびませんでした。
 Perfume・世界進出」であります。

 5月10日、Perfumeファンにとって衝撃的なニュースがネット上を駆け巡りました。
 
 ポリリズムピクサー映画「カーズ2」全世界挿入歌に決定】

 音楽ナタリーによる第一報→http://natalie.mu/music/news/49127

 「全世界」というところに注目です。日本公開版に日本の歌手の日本語曲があてられたり、吹き替えに日本の有名人が起用されることはよくある話ですが、世界共通で日本語曲が起用される事自体が稀なこと。「カーズ2」を鑑賞した世界中全ての人間が「ポリリズム」を耳にするわけです。


 それでは、なにを今さらって話ですが、あらためてポリリズムと言う楽曲が生まれたその経緯と変遷を回想してみましょう。

 長い地下アイドル時代から解散フラグを乗り越え、ネットを中心にじわじわと支持を集め始めたのが2006年中頃。近未来3部作から「Comprete Best」、TSPSを経て、2007年「Fan Service Sweet」が2月14日、「Fan Service Bitter」が3月に発売されました。「Sweet」収録の『チョコレイト・ディスコ』がバレンタインデーをテーマにした楽曲であるためにこの限定版CDの発売が実現したわけですが、この曲をたまたま歌手木村カエラが耳にし大プッシュされ、自身がパーソナリティを務めるラジオ「OH! MY RADIO」内で約1ヶ月に渡りヘビロテ(3月〜4月)。それをCMディレクター友次彰がたまたま耳にし、公共広告機構NHK共同の環境リサイクルキャンペーンのCM出演・楽曲起用が決定、放送開始が7月というのが楽曲誕生までの流れ。
 そして、音楽用語にリサイクル可能な素材ポリエチレンともかけられた「ポリリズム」というタイトルで9月にシングル発売。元来職人気質である中田ヤスタカをして「タイトルはそのもの『リサイクル』でも良かった」とまで割り切って作られたこのCMソングは、それまでPerfumeを支えたコアアイドルファン層以外の耳にも届くこととなり、オリコン30位の壁を破ったことのなかったPerfume楽曲の中で最高位となるオリコン初登場7位を記録しました。これを機に地上波音楽番組や国内大型音楽フェスなどにも参戦、その都度この楽曲が歌われることになり、紅白歌合戦にもこの曲で初出場。現時点でPerfumeが行った最大のイベントである「Live@TOKYO DOME 1234567891011」ではトリを飾る楽曲となり、そのパフォーマンスと演出の素晴らしさは観覧したファンに大きな感動を与えました。
 そして今回。上記リンクにもある通り、ピクサースタッフにたまたまPerfumeファンがおり、たまたま仮にあててみたポリリズムジョン・ラセター監督の耳に留まり起用に至ったというのがここまでの経緯。


 ドームであ〜ちゃんが「私たちに大きなチャンスを与えてくれた曲」と語った通り、Perfumeの歴史の節目節目でポリリズムという楽曲が大きく関わっている事がわかります。上記文章の中で「たまたま」という単語を繰り返し使っていますが、事務所のゴリ押しや大規模プロモーションを打つ事もなく、出世魚のようにこの曲の持つ意味合いや大きさが自然な形で変化していったわけですね。

 
 ここからは主観です。ポリリズムという楽曲を僕が最初耳にした時、「この曲はキラーチューンとしてはいささか弱いな」と感じました。「コンピューターシティ」でPerfumeを知り、「エレクトロ・ワールド」でその世界観にすっかり取り込まれた自分にとって、やや商業色の濃いこの楽曲に若干の違和感を感じたというのが本音です。このまま「耳障りのいい」「世間受けの良さそうな」曲のリリースが続くことは好ましくない、と。PerfumeはアイドルファンやTVゲームファン、クラブ音楽やロックが好きな純然たる音楽ファンまで取り込む「全方位型」アーティストであったはずだったのに、かえって活動の幅が狭くなって息苦しくなりはしないかと。
 しかしネット文化に対して極めて狭量であるはずの徳間が公開に踏み切ったこの動画↓を見ればもはやそんなことはどうでもいい杞憂だったことがよくわかります。

 ポリリズムはすでに一瞬にして5万人を歓喜させ、涙させ、心を揺さぶらせる、巨大な楽曲へと最終進化を遂げていたのですね。

 これまで日本で売れたアーティストが海外進出した例はいくつかありました。最近では宇多田ヒカルアメリカ進出をしてあまり良い成果が挙げられませんでしたが、決して彼女の曲のクォリティが低いわけではなく「相手の土俵で勝負した」のが原因であると考えます。その点でいうとテクノポップはほぼ「日本製」であり、日本ブランドが強い音楽ジャンルであるわけで、勝算は高いと思うのです。

 ツイッターなどでは「どんどん遠い存在になってしまうのが寂しい」という意見も見られましたが、こちとらポリがオリコン上位に入ったあの日からすでにそんなことは感じてましたよ。日本でテクノポップのアルバムが1位になったのはYMO以来、なんてニュースを聞いた時も。僕が好きになった頃の、かつてのPerfumeにあった地下アイドル臭やアングラ臭が完全に払拭されてしまったのは残念ですが、やっぱり大衆支持を集めることって大切だなと。一見さんも大切だなと。それこそ前述のピクサーの社員の方だって、僕のようにYouTubeなどで「たまたま」目にした動画に魅了されたわけで、そういう意味では古参も新参も同じファン仲間。好きになる時期なんて関係ないんですよね。
 遠慮なんていらない。どんどん大きな存在になってほしい。世界に拡大してほしい。それこそYMOに匹敵するぐらいのムーブメントを世界中で起こしてほしいものです。
 
 きっと大丈夫です。彼女たち自身はそこまで大きくなっても「ファンと遠くなる」ことを一番嫌がるグループですから。最近Perfumeが参加したイベント「ひろしまフラワーフェスティバル」でも、故郷に錦を飾れたことに対しあ〜ちゃんは相変わらず号泣していたそうですから。
 その画像なかったので過去のフラフェス出演画像から。衣装が安いです(苦笑

 そして今年のフラワーフェスティバルの様子。総来場者数169万人は歴代3位だったとか。すご!